家主一家が住んでいたカリフォルニア州のモハベ砂漠と言うところには
動物園でしか見ないような生き物が家のまわりにフツーに棲んでいた。
しかも、家は砂漠の中でもhigh desert(上砂漠地帯とても訳すのだろうか?)と呼ばれる
自然が残りまくって人里から離れまくった場所だったのでなおさら彼らと出会う確率が高かった。
例えばウッドペッカーに出てくる「ミンミン♪」こと、ロードランナー。
色はカートゥーンとは違い全身グレーだが、
全くあの通りにピューン!と俊足でかけ抜けていく。
餌は木の根元に棲んでいる「チックモンク」と呼ばれるねずみの一種で、
時おり獲ったチックモンクを口にくわえてビューン!とウチの庭を走り去っているのを見かけたりした。
そんな彼らもベイビーがいる時は、一時期日本で流行ったカルガモ一家よろしく、
後ろに10羽ほどを従えて、テケテケとゆっくり行進して行くのがとても微笑ましかった。
コヨーテは前にも書いたように、うちの近所一面そこらかしこに棲んでいて、
夜な夜な出歩いては放し飼いのペットやジャックラビット(シッポがまん丸でとっても可愛い♪)を食べているようだった。
ウワサでは(やってはいけない事だが)裏の通りの人はコヨーテを餌付けしていたらしい。
日本で裏山のたぬきに餌付けしたと言うような話と同じ状況だろう。
私も真似てみたかったが、その下心を家主に見破られ、
餌付けなどしないようきつーく言われたので諦めざるを得なかった。
今考えると一年の内に360日が晴天であり、一年間ほとんど雨が振らないこの場所で、
彼らがどうやって生きているのかとても不思議なのだが、
神様はきっと彼らが耐えられるような体を授けられたのだろう。
それにしても庭で体長10センチはあろうかというイボガエルを見つけたときは腰が抜けた。(←カエル大嫌い)
しかも草を抜いていてその影に不意打ちで座っていたから、
思わず後ろにバックうさぎ跳びをしてしまった。
なんで、水のないこの土地にかえるがいるのだ?君たちは水がなくても生きていけるのか?
と前置が長くなってしまったが、時にはありえない訪問者に驚かされたと言う話だ。
ある日現れたのは体長80cmほどのペリカンであった。
しかもガレージの真ん中にちょこんと座っていたのだ。
私は全く気づいていなかったのだが、近所の少年がご丁寧に
「あなたの家のガレージにトても大きな鳥が座っていますよ。一応教えておこうとおもって・・・。」
と訪ねてきてくれたので、不審に思いながらもそっとドアを開けてみてみると、
これは夢か幻か、なんとなんと本当に昔動物園で見たあのペリカンが一匹ポ~っと座っていたのだ。
くちばしの長さだけでも50cmはあろうかと思えたペリカンに
ギロリ、とにらまれて私はかなりビビっていた。
「どうしよう、どうしよう・・・」
とオロオロしつつ、取りあえず家主の職場に電話して、
「ガレージにペリカンがいるから気をつけて帰ってきてよ。」
とメッセージを残し、こんな機会はメッタにないのだからと、
この大きな鳥をにゃんにゃんに見せる事にした。
にゃんにゃんがペリカンを見て飛びかかるとまずいので、彼を小脇にしっかり抱え込み、
ガレージのドアをそっと開けて、
「ほら、ペリカンよぉ~。」と見せてみた。
そのときの彼の反応は、ビデオを撮っていなかったのを悔やまれるほど面白かった。
一瞬ギョットした顔をした後、目をまん丸に開いて、首を横にコキコキ振りながら様子を伺っている。
も~行きたくて行きたくてしかたがなくて、私の脇で「行かせてくれ~。」とばかりに
バタバタと足を場立つかせあがいていた。
鼻もヒクヒク、フガフガ、ハフハフしていて相当な興味深々ぶりだ。
でもあまりに暴れるので彼のペリカン観覧はこれくらいで終わりにし、
その後の彼はドアの前にピッタリと張りつき、隙間から一生懸命匂いを嗅いでいた。
今思えば、あの時にゃんにゃんを離していたらどんな事になっていたか・・・
ちょっと見てみたかった気もする。
チキンな彼のことだから、きっと腰を抜かして帰って来てたと思うけど!(笑)
余談だが、その後家主が帰ってきて、彼は約50cmの距離でペリカンと向き合い
椅子に座ってフカフカと煙草を吸っていた。
ペリカンは、しばらくじぃっとタバコを吸う彼を眺めた後、
ポトポトと黄色いウンチをガレージに落とし(←失礼なヤツ)テケテケとお隣のガレージへ歩いていったのであった。
一体ヤツはこの砂漠のどこから来たんだろう?
未だもってなぞである。