家主の英断

家主の英断

家主の英断


↑いつもいつも仲良しのふたり

 

 

にゃんにゃんの行き先が不透明になってしまったことで、トチ狂ってしまった嫁を見て家主はどんなに悲しかっただろう。

 

きっとどうしようもない猫キチガイと結婚してしまったと、あきれるやら情けないやらな気持ちだったと思う。

 

 

彼は大騒ぎしている私をじぃっと眺めていた。

 

そして深~いため息をひとつ吐くと、

 

「実家に電話してさぁ、ちょっとだけ預かってくれないかもう一回聞いてみてよ。」と言った。

 

 

なんということでしょう~

 

 

彼は事もあろうに、この生きた黒猫にゃんにゃんを日本へ送ってくれるというのだ!

 

自腹なのに、だ。

 

 

天使だ!メサイヤだ!なんて良い人なんだろうか!
こんな人と一緒にいる私はラッキーかもしれない。
いや、ほんとにラッキーなのはにゃんにゃんだ。

 

 

私は時差も考えずに、日本の実家の母へ電話を入れ、母が「もしもし」も言い終わらないうちに
「緊急事態発生です!猫を預かってください!」と捲くし立てた。

 

「なんね~?」と母は事態を把握してはいなかったが、とにかく娘が困っている事はわかっていたので
ひとしきり成り行きを聞いてから、ほんとに少しの間だけならと念を押しながらもにゃんにゃんを預かることを承諾してくれた。

 

 

「ヤッターーーーー!!」

 

 

沖縄でもにゃんにゃんと住める!

 

 

別れなくていいんだよ!

 

ずっと一緒に住めるんだよ!

 

 

私は狂喜乱舞、嬉しくて嬉しくてたまらなかったのだが、

 

実はこの決断がにゃんにゃんにとって辛い日々の始まりだとは、誰も思ってはいなかった。

 

 

 

にゃんにゃんの、長くて、不安で、寂しい旅はこうして幕をあけたのだった。