さようならおタマちゃん

さようならおタマちゃん

さようならおタマちゃん

 

わが家に居ついて1か月ほどした頃、なぜか彼は一晩中鳴き続けるようになった。

 

 

そのものすごいことったら、
夜10時ごろ始まり、うなるような声で

 

「ヌヲォ~~~~~ヌヲォ~~~~」

 

と明け方まで続くのである。

 

 

私はいいけど仕事をしている家主には、子供の夜鳴きに苦しまされているようなものだ。

 

こんな状態が1週間ほど続いた頃に近所の友人から
「それって発情期じゃない?」と言われた。

 

友人はこのエンドレスな夜泣きを静めるには去勢が必要だといった。

 

 

ど田舎田んぼの真ん中で半野良状態でしか猫を飼った事のなかった私に、
猫に手術を施さなければならないと言う事実は、
17歳の時に、一般の家庭では米を「米屋さん」という所から買って食べている。
と言う事実を知ったときくらいショッキングな事であったが、

 

とにかくどっちみち、彼をハウジングオフィスに登録するためには獣医さんに行って
健康診断を受けなければならないので、ついでに去勢オペをしてもらうことにした。

 

ドクターの爪が・・・

 

街で唯一の獣医さんはとても感じが良く、動物が好きなのが伝わってくる初老のドクターであった。

 

ドクターはすっかりまるまると太っってしまったにゃんにゃんを見ると「お~きいねぇ~。」と
目を細めて笑っていた。そしておなかや目などを検査し、次に歯を見てくれた。

 

「ストレイキャットだったから年齢が分からないんです。」と私が言うと
「歯を見れば大体分かるよ。」とにゃんにゃんの口をムニィ~~~ッ。と開いたその時に、
忘れられない事件が起きた。

 

 

「あ~~~歯垢が結構溜まってるねぇ。」といいながら初老ドクターは
にゃんにゃんの頑固な歯垢を自分の爪で引っかき始めたのだが・・・

 

なんと、

 

「バキッ!」

 

っという激しい音と共にドクターの爪がごっそり折れてしまったのである!

 

 

「アッ!!!!!?」

 

私達はすごく驚いたが、初老のドクターは何事もなかったようにカリカリと他の爪で
歯垢取りを続けている。

 

隣りにいた若い金パツの助手は慌てて「先生ツ、ツメが・・」と青ざめていた。

 

 

しかし彼は動揺もせずに「うん?」と聞き返したまま、せっせと歯垢を
掻き落とし続けている。

 

高齢で神経が鈍っているのか、長年の獣医生活でこんなこと慣れっこなのか分からないが、
このドクターだてに年を取ってないぜ、と妙に感心してしまう私であった。。

 

 

さてこの後いよいよにゃんにゃんのオペだ。

 

 

麻酔を使うので1日入院させてください、と言われ、オドオドしている彼を残して
私達は退散することにした。

 

入院から返って来たクロネコ

 

次の日は3時にお迎えの予定だったので、待たせちゃ悪いと時間きっかりに迎えに行った。
獣医さんに行くとまさに「猫かぶり」をしてしまう彼だが、
この日は輪をかけて大人しくうずくまっていた。

 

 

それもそのはず、彼の麻酔はまだ解けていなかったのだ。

 

「しばらくボーっとしますから。」と看護婦さん(と呼ぶのかな?)の言葉通り
院内でも車の中でも、彼は宙を眺めてボーっとしていた。

 

ボケボケな彼はウチにつくとちょっとだけ戸惑ったように当たりをかぎまわし後、
いつものカウチに向かって歩き出し、いつものようにカウチの上へピョン!と飛び上がったのだが・・・

 

 

ドテッ。

 

 

と鈍い音と共に床へ落ちてしまった。(^^;)

 

 

麻酔の解けていない彼は感覚が戻っていなかったのか、体がいつもの高さに及ばず
カウチの本体に体当たりして、ずっこけてしまったのだ!

 

「ウププッ。」

 

いや、笑ってはいけない、いけないのだが、笑いは止まらない。

 

「ププ~~~ッ。」

 

 

ごめんね、にゃんにゃん。

 

でもずっこけにゃんにゃんもカナリの萌えポイントなのであった。