そうして頭を悩ませているある日、
ウチから1時間半ほど砂漠を下った[パームスプリングス]
という街のペットショップへふらりと立ち寄ったことがあった。
この土地は全米でもトップクラスの保養地で、〈故)フランク・シナトラやボブ・ホープなど
超有名所が豪邸を持ち、PGAクラスのゴルフコースが当たり一面に散らばっているという
ウルトラスーパーリッチ地帯である。
そんなギンギラギンのお年より達が闊歩するお土地柄のペットショップで
品の良いおばあさん達が数人、子猫の入った10あまりのケージの前でたむろしているところが目に付いた。
ケージの前には
「猫いりませんか?」
と書かれたサインが置かれている。
「あのぉ、何をしてるんですか?」
「猫の貰い手を探しているのよ。」
その中でも中心人物らしきその女性はやさしく答えてくれた。
彼女達はボランティアで月に数回こうしてこのペットショップで
猫たちの養子先を見つけるべく猫を持ちこんで集まっているのだという。
「そうですか・・・実は私は上の砂漠の軍のある街から来たのですが、家主が日本へ転勤になって
猫を置いていかなければならなくなったんです。誰かいいひとがいればイイのだけど・・・」
と私はつたない英語で聞かれもしないのに状況を話し始めた。
「そうなの・・・」
その女性はしっかり話を聞いてくれた後、
「ここにいるシェリルに電話してちょうだい。」と一枚の紙切れを渡してくれた。
彼女が紹介してくれたのはこの街にある猫専門のシェルターであった。
しかしこのシェルターは私達の町のそれとは違い、死ぬまで面倒を見てくれるという施設であった。
運営しているのはこの町に住むお金持ちの猫好きのおばあさんたちで、どうやら彼女達は
猫の面倒を老後の楽しみとしているようなのだ。
さすが優雅なというか、素晴らしいことではないか!!
どんな猫でも生涯面倒を見るということで、
登録時は$100(約12000円)が必要だということだったが、そんなものお安いものである。
そこへ入れればにゃんにゃんは猫ずきの元で生涯快適に暮らすことが出来るのだ。
預かってもらえるものなら、毎月いくらかの送金をしても良いと思った。
「ありがとうございます!!!」
私は深深とお礼をし、その紙切れを握りしめて家路を急いだ。
にゃんにゃんの行き先が決まったことは嬉しかったが、
いよいよ彼とのお別れが現実的になってきてしまっていた。
だから帰路の途中、彼との別れを思うと涙が出てきて止まらなかった。